
石黒 敬三
プロダクトデザイナー。現場のためのプロダクト開発を長年続け、教育テレビ番組の監修なども務める。代表作に「Hands-On History」「Build Your Future」など。デザインオフィス「Odd Deisgn」代表。
小学校1年生の児童たちは、想像力と創造性に溢れ、新しい世界に対する好奇心を持っています。彼らの視線は純粋で、まだ成人の私たちが持つ先入観や固定概念に縛られることはありません。それは、一見すると何でもない日常の一場面に、新たな視点や解釈をもたらす無限の可能性を秘めています。それこそが、デザイン教育の出発点だと私は考えています。なぜなら、デザインは新しい視点を持つこと、そしてその視点を形にすることから始まるからです。
あらためて、デザインとは
デザインとは、一言で言えば、問題解決のための手段です。それは我々が日常的に使用する製品、または我々が日々生活する環境に対するアプローチの一つです。デザインは、形状や色、材料、そしてそれらが人々に与える感情や反応について深く考えるプロセスです。
例えば、机と椅子。これらは単なる家具ではありません。それらは、我々が学び、作業をする場を提供し、姿勢を保つための道具です。その形状や素材、大きさは、我々がどのようにその場で過ごすかを左右します。それはただ物を作るだけでなく、人々の行動や経験を形成し、それにより社会をも形作る役割があります。
そして、デザインは誰もが参加でき、誰もが恩恵を受けることができる領域です。それは専門的なスキルを必要とする一方で、我々が日々の生活の中で直面する問題を解決するための視点を提供します。だからこそ、小学校1年生からデザイン教育を始めることは、我々の生活をより豊かで意味のあるものにするための重要な一歩なのです。
子供も、大人も
あなたが小学校1年生の子供たちと一緒に過ごす機会があれば、彼らがどれだけ驚異的な創造性を発揮するかを目の当たりにするでしょう。例えば、一見単純なブロック遊びでも、彼らはただ積み重ねるだけでなく、色や形状を選び、新しい物語を紡ぎ出します。それは、彼らが自らの世界をデザインしている瞬間なのです。
私たち大人がデザインと称するものは、実はこの子供たちが自然に行っていることと本質的には変わりません。違いは、私たちがそれを意識的に行い、より具体的な問題解決のために用いている点にあります。この視点を共有し、彼らの創造性を引き出すことで、子供たちは日常生活における多様な問題をデザインの視点から考える力を育てることができます。
例えば、お絵描きの時間に子供たちがよく遭遇する問題、色鉛筆がこわれてしまうといった事態。ここで子供たちに考えさせるのは、「どうすれば色鉛筆がこわれないようにできるか?」という問いです。これは、本質的には製品の強度や使いやすさといったデザイン要素について考えることに他なりません。こういった日常的な場面でデザインの思考を引き出すことで、子供たちは自分の周囲の世界をより深く理解し、改善するためのスキルを育てることができます。
育てる現場
私のデザインスタジオ「Odd Design」では、小学校1年生向けの教育用プロダクトを開発しています。それは、子供たちが自分自身の考えを形にするためのツールです。プロダクトの一つに、「BuildBox」という名前のブロックセットがあります。これはただのブロックではありません。その形状や接続方法は、子供たちが自分のアイデアを自由に形にすることを可能にします。それを通じて、子供たちは自分自身の物語を生み出し、またそれを改善し続けることを学びます。
また、私たちは実際の教育現場で、これらのプロダクトを用いたデザインの授業を実施しています。その授業では、子供たちが自分自身で問題を見つけ、それを解決するためのアイデアを考え、そしてそれを実際のプロダクトとして形にしています。その過程は、一見するとただの遊びのように見えるかもしれません。しかし、その中には真剣な問題解決の過程が含まれており、子供たちは自然にデザイン思考のスキルを身につけることができます。
デザイン教育は、子供たちの可能性を引き出す重要なツールであると私は信じています。それはただ美しいものを作るだけでなく、我々の生活を豊かにし、我々の問題を解決するための道具であると考えています。そして、その道具を使いこなすためには、早い段階からの教育が不可欠です。
教育としてのデザイン
子供たちは多様な視点から物事を見る能力を培い、一見単純な問題でさえも深層にまで思考を巡らせるスキルを身につけることができます。それは彼らが自らの力で解決策を導き出す力を養い、また、新しい視点や可能性を見つけるための敏感さを育むことに繋がります。
また、デザイン教育を通じて子供たちは、自分の考えを形にする喜びや、自分の創造したものが他人の生活を豊かにする経験を得ることができます。これらの経験は、彼らの自信を育み、社会全体との関わりを理解する契機となるでしょう。
我々が教育の場でデザインをどのように取り入れるかは、次世代が直面する課題にどう立ち向かうかを左右します。我々は、子供たちに問題解決のスキルを教え、自分自身の創造性を信じる力を育てることができます。デザイン思考は、彼らが自らの力で解決策を導き出すための貴重なガイドとなることでしょう。
デザインの力を信じ、子供たちにその力を教えることがいかに重要か。デザインは、子供たちが自分自身の世界を作り上げるための道具であり、それを育てることで我々は次世代に希望の灯をともすことができます。
教育の目的は、ただ知識を伝授するだけではなく、生徒たちが自分自身の力で世界を理解し、そしてそれを形作る能力を身につけることです。我々が授けることのできる最大のギフトは、彼ら自身が自分たちの未来をデザインできる力、そしてそれを信じる勇気ではないでしょうか。この思考力は、彼らが自らの人生をデザインし、社会を形成する力となるでしょう。
